【参考解説】放射線の生体影響の確率的影響(晩発影響)のリスク比較。1990年のICRP-60(日本の現行法規)と2007年のICRP-103(現状の勧告)とのリスク評価結果の比較。被曝者本人の発癌リスクと、その「次世代への」遺伝的影響リスクの、それぞれのリスク比較について。ICRP-103の2007年勧告では、特に遺伝的影響のリスクが、これまでの何と6.5分の1に激減した(1Svあたり1.3%→0.2%)。これは何もこの世の変化ではなく人類進化でもない。ただただ広島・長崎の被爆者の方々に、遺伝的影響が確認できなかったという膨大な追跡調査結果が明確になった事実の反映である。その結果の上限値が上記の数字。このあたり、ある種の感慨を覚えずにこの結果を見ることはできない。関連部分を引用しておきたい。《結論として「放射線の遺伝的影響」は心配無用である。なぜなら…人類遺伝学史上で最大規模の周到な計画のもとに、長い年月をかけて被曝二世の追跡調査が忍耐強くおこなわれた結果であるからである。「この調査では、被ばく者とその家族の人が、原爆遺伝病に関する誇張された報道の矢面にさらされながら、もくもくと協力してくださった。そのおかげて…科学的に厳密な青果が得られた。」この感謝の言葉は…この調査の最終報告書(1990年のアメリカ人類遺伝学雑誌)の中にわざわざ述べられている。》(出典:『人は放射線になぜ弱いか』pp.87-89.)。なおこの図で、癌のリスク係数(1Sv当たりの致死的な発癌リスク)は6%→5.5%に減っている。これは最近の研究進展を反映した結果。